雪道

http://stst.cocot.jp/mygame/mygame.html
何度も何度もここで紹介しているというのに、いまだプレイしていないけしからん友人がいるらしい。
 
私がみんなに最もおすすめするゲーム。雪道。
雪道をやらずしてゲームデザインを語るなかれ。そんなことすら思えるほどの名作です。
 
■ルールがシンプル
前に進むだけ。
前に進むとランダムで何かが起きる。敵とあったり、宿屋と遭遇したり、武器自販機と遭遇したり。
攻撃力 - 防御力 = ダメージ。
レベルアップすると最大HPが増えるだけ。
最大HPを支払うとパラメータ(攻撃力とか)を自由に伸ばせるという、リスクリターンが非常にわかりやすいパワーアップ。
 
ここまでルールが簡単なゲームはそうそうありません。
たったこれだけで、ゲームの面白さのほとんどを表現してしまうセンスに脱帽です。
 
■リスクリターンが明白
リスク:最大HPを5減らす
リターン:攻撃力を1上げる
このリスクリターンが明確なのは、ダメージルールが単純なため最大HP5の価値や、攻撃力1の価値が非常にわかりやすいからです。
 
理解していないゲームデザイナーは、この「最大HP消費でパワーアップ」のルールだけ真似てしまいます。
例えばドラクエ2にこのルールを入れようとします。
ですが、ドラクエ2のダメージ計算式ははるかに複雑です。
(実際は割と簡単なのですが、ダメージ計算式を知っているプレイヤーはほぼいないでしょう)
攻撃力が1あがると、ダメージがどれくらい伸びるかがまったく直感的ではありません。
結果として「ドラクエ2+このルール」は糞ゲーになってしまうでしょう。
 
■リスクリターンがとても明白
自分のHPが残り4の時に、「マッチ10本払えば泊まれる宿屋」と出会いました。
あなたはここで10本もの大金を払って泊っても良いし、もっと安い宿屋に出会うことを祈ってスルーしても良い。
 
全てはユーザーの選択です。
リスクもリターンも、すべて見りゃ分かります。
いままでの戦闘から、HP4はひん死で、次に敵と会うとヤバいことも明白なのです。
だが、あえて…。
 
この選択こそがゲームです。
 
■適度な謎
このゲームは基本ルールがシンプルです。
ですが逆に、魔法や特殊行動系のルールは非常に『謎』です。
説明がろくにされないのです。
 
基本ルールで遊んでいる限り使う必要のない部分。
ここに、このゲームのもう一つの魅力が隠されています。
 
ですがあえて説明しないのです。
ダメなゲームデザイナーだと、魔法や特殊行動系もひたすら説明しようとするでしょう。
チュートリアルを作ってそこで長々説明する。なんていう愚行すらしてしまいかねません。
 
雪道をやってみてください。
ユーザーが魔法に触れるのはだいぶ後です。
基本ルールで何度も遊んでいるうちに、自主的に魔法に手を伸ばします。
そして色々実験します。
当然何度も失敗します。
基本ルールで雪道を楽しみ、好きになった後に魔法に挑むのです。
だからこそ『謎』の解明が楽しいのです。
 
最初からいきなり「ほらよ、『謎』だ。解けや」と渡されても単なる離脱ポイントです。
逆に魔法が明確すぎて『謎』でなかった場合、それは単なる蛇足ルールです。
最高の基本ルールに、余計なルールが追加され、ルールの規模が大きくなるだけです。
 
『謎』というハードルを自主的に解き、自分でルールを追加していくからこそ、大きなルールだったとしても理解することができるのです。
「ゲーム中盤からルールが追加されて、ジョブチェンジができるようになったよ」とも違います。
最初からできるのです。
ですが、謎だから自主的に後回しにし、ゲームに更なる刺激を求めるころに自主的に謎に挑み、自主的にルールを追加するのです。
 
■プレイの幅
ステージボスからは必ず逃げることができます。
ステージボスから逃げれば、雑魚戦でまたレベル上げをすることができます。
ゲームが苦手な人でもこのおかげでクリアすることができるでしょう。
 
ですが、ボスから逃げると、このゲームの真のラスボスと会うことができません。
「ステージボスから逃げない」が条件だからです。
 
真のラスボスを目指す時、このゲームの面白さはMAXになります。