アイテム課金が滅びる日

http://dochikushow.blog3.fc2.com/?no=2523
分かりやすくまとめてくださっているページがあるのですが、私も色々書きたいなと。

事の発端はこの文書。消費者庁が発表した、アイテム課金についての見解PDFである。
インターネット上の取引と「カード合わせ」に関する Q&A(PDF)

長い文章なので、3行で要約する。
《》で囲まれてる名前は、カードの名前の例です。
 
《ゴブリン》と《ホブゴブリン》をガチャで手に入れられるとする。
その2枚により「ユーザーがお金払ってでも手に入れたい」何かしらの経済上の利益が出る場合。
ガチャを「有料ガチャ」する、または「無料ガチャであっても無料ガチャを引きやすくするための課金アイテム(スタミナ回復薬とか)を売る」のはNG。
 
\(^o^)/オワタ。
何が終わったのかを1個ずつ解説しよう。

《ゴブリン》と《ホブゴブリン》をガチャで手に入れられるとする。

ガチャである以上、2種以上のアイテムが入っているのは当然である。
なので「ランダムでアイテムが手に入るゲーム」において、この条件はすべて当てはまる。

その2枚により「ユーザーがお金払ってでも手に入れたい」何かしらの経済上の利益が出る場合。

この利益についてQ&Aがある。
PDFのQ20〜23がそれである。

・「通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの」を利益とする。
・仕組み上RMTできず現金化できなかろうが、トレード不可だろうが、関係ない。
・利益はアイテムに限らず、攻撃力がアップしたり必殺技が使えたりするものも利益だ。
・《ゴブリン》《ホブゴブリン》を足した時、単純な加算よりも多くの結果(コンボ補正とか)が得られるかどうかは関係ない
 
この「通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの」という言い回しが曲者すぎる。

ただし、表彰状、表彰盾、表彰バッジ、トロフィー等のように提供を受ける者の名誉を表するようなものは、通常、経済的対価を支払って取得するとは認められませんから、経済上の利益には含まれません。

と書かれているのだが、本当にそうなのか?
トロフィー一覧画面で、トロフィーが埋まっている画面を見たいという欲求は誰にでもある。
これは通常「ゲームに対価を支払わないと見られない画面」だ。
トロフィーをコンプすると女の子が脱いでくれるなら?
これは「経済的対価を支払って取得するもの」扱いされそうだ。
なら、トロフィーが揃っている画面そのものも、人によっては「経済的対価を支払って取得するもの」ではないか?
 
それはともかくとして攻撃力1の《ゴブリン》と攻撃力2の《ホブゴブリン》を組み合わせたら、敵に3ダメージ与えるのも「コンボ」だ。
《ゴブリン》と《ホブゴブリン》を買わないと、ダメージを与えることはできないわけだからNGだ。
いや、さすがにこれは認めてもらわないとゲームにならないだろ。
とはいえ、最低限これがお目こぼしをもらったとしても、「ゴブリン族を組み合わせたことでゴブリンコンボ発生。追加で1点のダメージ」とかやったら絶対ダメだろう。
 
もうゲームにならない。
いや、そもそも上で「最低限これがお目こぼしをもらったとしても」の件について、お目こぼしがもらえるとは思えない。

世の中自分のチームを「天海春香を全種入れたチームにしたい」というだけで金を払う人がごまんといるのだ。(それが強い弱いに関わらず!)

ガチャを「有料ガチャ」する、または「無料ガチャであっても無料ガチャを引きやすくするための課金アイテム(スタミナ回復薬とか)を売る」のはNG。

TCGが全滅確定。
続いて、1プレイ100円系のゲームがひん死確定。
 
後者がどういう意味なのか説明する。
一番わかりやすいのは三国志大戦だ。
100円払ってプレイすると、最後にランダムでカードがもらえる
ゲームをプレイしたののおまけですから。とかは関係ない。
明らかに「100円払ってランダムでカードがもらえるガチャ」である。
当然特定カード同士の組み合わせによって、強力なコンボが発生するため、今回の条件にもろ引っかかる。
つまりゲームをプレイした時に、ランダムでアイテムがもらえるゲームは全滅だ。
 
「じゃあ、最後に出るカードが完全ランダムではなく、ゲーム内の結果を反映していたら?」
ゲーム自体にランダム性があるのでダメだ。
ぎりぎり許されるのは「最後に出るカードをユーザーが任意で選べる」場合だけだ。
 
さて、もっと大変なことがある。
「通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの」には当然「勝ち星の記録」も含まれるはずだ。
スト4のように、カードに勝ち星が記録されるゲームはすべてNGだ。
 
いや、そもそも「ゲームに勝ったという快感の記憶」も、「通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの」のはずだ。
だってみんな、そのためにゲームやってるんだろう?
勝っても負けてもどうでもいいのなら、金払ってまでゲームやらないよね?
 
つまり「ゲームのプレイにお金が(直接的にでも、間接的にでも)かかる」ゲームは全否定である。

実際のところ運用はどうなのか

屁理屈のようになってきたので、いったん話をリセットしよう。
消費者庁も、さすがにそこまで恣意的な運用はしないだろう。
では実際、このPDFは何のために発表されたのか。
 
もちろん、通称ソシャゲと言われているゲーム全般に「おい、いい加減にしとけよ」と警告を発するためだ。
となると、禁止したいのは以下のものであると考えられる。
・有料ガチャ(または有料で手早く引ける無料ガチャ)で手に入れたアイテムを複数種組み合わせると
・(勝ち星や大ダメージなどではなく)所有欲を満たせる「アイテム」という形で、新たなアイテムが得られる

あたりが、規制対象か。
この新たなアイテムには、合成に使った前者のアイテムのパワーアップ版(絵が同じで攻撃力があがってるとか)も含まれるだろう。
 
政治家への献金、ロビー活動、世間の風潮。
このあたりで最終的な運用は決まると思われる。
 
DeNAやグリーが好き放題やってくれたおかげで、今までのゲームの商法までもが巻き添えを食うのが許せん。
(特に、カード合成とかはない昔ながらのTCGまで巻き添えをくらいそうだ)
以前、秋田書店が全年齢エロ本を出しまくったせいで、出版業界全体が巻き添えくらったのと同じ状況だ。

とはいうものの、自分の売り物に定価くらいつけろよ

とはいうものの、自分たちで作った商品を、ガチャなんぞで売るなよ。
定価つけて売れよというのが、世間一般人の感覚ではないだろうか?
 
だって、文房具屋や家電屋が、(福袋は別として)ガチャで売ってるとかありえんだろう?

コンピュータゲームとは「お金の絡まない博打」である

そもそもコンピュータゲームとは、一度買えばそれ以降は「お金が一切絡まない状態で、博打のスリルを疑似体験できる」ものだったはずだ。
 
だから敵を倒して得るアイテムがランダムだったり、与えるダメージがランダムだったり、ストーリーがランダムに変化したりする。
 
が、そこに自ら「ゲームルールに関連する課金アイテム」という要素を足してしまったのだから、遅かれ早かれこの事態は起きたであろう。
 
任天堂などがやっている「ステージ追加に対して課金する」は問題ない。
そうではなく「ゲームルール上で有利になるためのアイテムに課金する」なら、どうしたって「お金が絡む博打を体験する」ものになる。
 
それって博打そのものだ。
そして日本は博打は禁止だ。

ゲーム業界どうすんの

正直頭が痛い。
ゲームの本懐を取り戻すのであれば、月額課金に戻るのが一番「法的に問題がない」方法だ。
PDFでも月額課金オンリーものならば、絵合わせだろうがなんだろうが問題ないと明記されている。
 
だが、今更月額課金にみんなお金払ってくれるか?
超ヘビーユーザーが、大量の無料ユーザーのコストを支えてくれているという現状がいびつなのは確かだ。
 
とはいうが、大量のユーザーから「広く浅く」お金を取るのはゲームという形態ではもう難しい。
 
そもそもオタク同士の趣味から始まったゲーム文化だ。
死にかけてる伝統芸能のように、淘汰されていき、オタクのたしなみに戻るのではないだろうか。

追加

そうそう、忘れてた。
ガチャであっても「アイテムAを複数集めると、アイテムBが手に入る」は合法。
複数種類を集める「絵合わせ」に該当しないため。
 
「ガチャが禁止されたわけではない」ことに注意。
私は、今回の見解によって「カード同士のコンボ」というTCG的なゲームまで巻き添えを食らったことについて嘆いている。