ハイムービ−

オークス馬、フラッシュムービーの仔として一身に期待を受けた牡馬ハイムービー。
父は中距離で活躍した良血馬シェイディハイツ。
「狙うはダービー」それを合言葉にデビューを飾った。
 
だがレース展開に恵まれず2着が続き、3歳時代はなかなか勝ち上がることができなかった。
しかも調教中の故障により復帰は4歳春。
皐月賞を狙うスターホースたちとは違う裏街道を進むことになる。
ダービーへの出走を賭けた青葉賞ではまさかのシンガリ負け。
菊花賞でも10着と沈み、完全に表街道から姿を消したかに見えた。
続くディセンバーSでも掲示板が精一杯。
だが的場騎手はこの時言い知れぬ手ごたえを感じ取っていたと後に語る。
 
5歳になってからアメリカJC、日経賞と勝ち、GI勝ちを狙って着々と爪を研ぎ始めたハイムービー。
脚元の弱さからレースの本数を減らし、新潟記念を勝った後は長期休養。
いっきに有馬記念に打って出た。
そして見事先行で直線。一番人気のアグリキャップをも突き放しての圧勝劇となった。
 
本格化を見せたハイムービー。
だが悪夢が彼を襲う。
調教中の骨折。復帰は冬。
そして狙うは丁度1年ぶりのレースとなる有馬記念。それに向けての調教中再び骨折。
全盛期での活躍は一切果たせず、誰からも忘れられていった。
 
1年10ヶ月ぶりとなるレースとして選んだのは天皇賞・秋
的場騎手が選んだのは古場最強と名高いライフシャワー。不義理と言えるはずもない。
全弟であるミルストーンが先行する中、ハイムービーは中団やや後方という位置に待機。
初めて見せる差しのスタイルだが、観客の注目はライフシャワーに集まっていた。
ライフシャワーと、それをマークしていたフジヤマケンサン、カリノクレッセ、ミルストーンが直線で叩き合いを演じる。
そしてライフシャワー制したと思われたその時、場群の中央を割って先頭に飛び込んだのはハイムービーであった。
タイムは2.01.4。
ハイペースとなりがちな天皇賞・秋において非常に遅いペースだったと言える。
追い馬にとって不利なスローペースで見せた末脚は、母であるフラッシュムービーがオークス戦で見せたそれの再来であった。
 
その後2戦ほど走るも惨敗。
天皇賞・秋で力を出し切ったのだろう。8歳で引退となった。
幻の2年間。怪我さえしなければいくつの重賞タイトルを獲得しただろうか。
歴史に「もし」は無い。
だが、それでも…。
 
現在は種牡馬としてとある牧場で余生を送っている。
ワスレナグサから始まったハル牧場の牝馬血統はここで終わりを告げた。
GI計7勝。
紛れも無い良血であった。
 
生涯成績 20戦9勝
本賞金 26250万円
総賞金 54810万円
主な制覇レース
 有馬記念
 天皇賞・秋